人気ブログランキング | 話題のタグを見る

読んだ本について感想を述べたり述べなかったり・・・書評・コネタ連動メルマガも登録宜しくお願いします。 「濫読ひで」より


by moon99999
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ブルータワー


ブルータワー
石田 衣良
徳間書店 2004-09-16
http://tinyurl.com/655pc

石田衣良によるSF作品。
彼によればSFを書くのは初めてということだった。
911にインスパイアされて、崩れない塔の話を書くことになったという。

瀬野周司は、脳腫瘍におかされていた。妻は周司の部下と浮気をし、女性部下は自分に思いをよせている。
周司に、強い頭痛が襲った。気がついたときには、周司は未来世界のセノ・シューとなっていた。シューは「ブルータワー」の「三十人委員会」という評議会のメンバーだ。 その世界は、黄魔とよばれたインフルエンザにより地上は死におかされており、人々のうち選ばれたものだけが、ブルータワーを含むいくつかの塔(高層ビル)の中で暮らしている。
ビルの中は人々の生活ランクによって層がわかれており、周司は上のほうの人間として、最下層の第五層の女性の「初夜権」を買っていたのだった。
周司はそこで出会った女性とともに、この世界を変えたいと願う。 一方、世界は動き、テロリストはビルの破壊をはかったり、第一層の連中は地上や下層の連中を殺戮したいと思っている。資源に限りがあるからだ。
周司は、セノ・シューとして、世界を変えるために動きはじめる。 頭痛がはじまると現世に戻り、また未来に行く、ということを繰り返しながら、周司は未来を救うべく、行動していく・・・


未来は破滅的になっている、というのは昔のSFでよくあったストーリーのようだ。
実際私がこの前に古本で買った「地図にない街」というPKディックの短編集の中にもそういう話があるし、矢野徹にもある。それこそ横田順禰のデビュー作「友よ、明日を・・・」も終末戦争ものだった。
石田衣良はこの作品の終末部分を、ハミルトンの「スター・キング」という作品へのオマージュとしているようだ。
昔、鶴書房で読んだ『人類のあけぼの号』内田庶 というSFジュブナイル小説がある。これは、未来のツキジに飛んだ「現代」の若者が、未来世界でのロボットたちを救う話だった。これの最後の部分でも、主人公が夢の中で、未来にその後起こったことを知る、というところがあった。

本作品は、SFの未来物、終末戦争もの、あるいはパラレルワールドもの、という分類がされるのだろう。

石田衣良には女性ファンが多いが、この作品はSFファンにも理解をもって受け入れられるのではないかと思う。
アクションシーンは少ないが、周司が世界を救う、という予定調和に向かっての話はうまく作られていると思う。
書きかたによっては、いくらでも暗くなる作品を、ある程度明るくまとめあげられたのはさすがだ。
期待を裏切らなく作品だと言える。

お勧め度:☆☆☆☆   未来はもっと明るいものだとは信じたいところです。

なお、エキサイトブログ等でこの作品に言及しているサイトにもトラバさせていただきました。


関連ブログ

by moon99999 | 2005-02-06 23:49 | SF