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by moon99999
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コイン・トス

コイン・トス幸田真音
講談社 (2004/06/16)
http://tinyurl.com/5m3ye

「eの悲劇」の続編ともいえる。
主人公は、元は信託銀行の凄腕ディーラーだったが今はガードマンになっている篠山。
彼は、10年ぶりに昔の同僚、冴子に会う。
そして冴子と再会を約したものの、彼女から突然の電話が。冴子は、2001年9月11日に、ワールド・トレード・センターにいたのだ。
WTCからの電話は切れ、その後彼女の消息は絶える。
篠山は、冴子の足跡を追い、NYへ・・・


ミステリー仕立てだが、それほどのミステリーにはなっていない。途中にはドラマもそれほど大きくは無い。 
こう書いてしまうと、作品としては、それほどの出来ではないのかもしれない。

しかし。
これは、彼女には絶対必要な作品だったのだと思う。

ワールド・トレード・センターに勤務したことがある彼女にとっては。
あのビルの大きさを知っているものとして。
それが消えてしまった事を、自分に納得させるために。

彼女自身、WTCの跡地へ行くことをためらい、行っては衝撃を受けたという。
その気持ちはわかる。

彼女を救い出す道具として、この作品があったのだと思う。
この作品を書くことは、彼女なりの過去への鎮魂だったのだろう。
そして自分のなかで過去に区切りをつけるためのツールだ。

この作品は、感情移入する人としない人がかなり割れる作品だと思う。
前者の人には受け、後者には評価されないのではないだろうか。

それでも、幸田ファンならずとも読んでみていい作品だと思えるのだ。

お勧め度:☆☆☆1/2 過去よりも未来を。
by moon99999 | 2005-02-10 20:55 | 文学系