人気ブログランキング | 話題のタグを見る

読んだ本について感想を述べたり述べなかったり・・・書評・コネタ連動メルマガも登録宜しくお願いします。 「濫読ひで」より


by moon99999
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

その時は彼によろしく

4093861382そのときは彼によろしく 市川 拓司
小学館 2004-03-31




恋愛小説のよしあしを語るときに
1)表現のよしあし
2)設定
3)ストーリー
4)結末

などを見て考える人は多いと思う。



あるいは、私のように、作品に「共感」できるかどうかで考えるのもいいと思う。

この小説は、「今、会いにゆきます」の市川拓司の書いた長編恋愛小説だ。
その言葉を聴いて、喜ぶひとと、げんなりする人がいるだろうと思う。

「どうせ内容のない、予定調和的な恋愛小説だろ、オレにだって書けそうだ。」
そう評する人がいてもまったく不思議はない。   実際は、書けそうだ、というのと書く、というのは想像以上に大きな壁があるのだが。

さて、この作品を、本屋大賞のノミネートの中で、大森望氏はいろいろけなしていた。
表現も好きになれない、という。

などとネガティブなものをまず並べ立てた上で。

私は、この作品が好きだ。
表現が稚拙なりエセ文学だといわれようとも。
ストーリーがご都合主義でも。
結末が見えていても。
「こんな男はいない」といわれそうだと思っても。

一種の純愛物語、ともいえなくもない。
不思議な話だ。

愛にもいろいろある。男女の愛と家族の愛は違うかもしれない。
だが、他人のために何かするのが愛だ、とすれば、恋人の対しての愛と家族への愛も同じかもしれない、と思ったりする。

この小説のタイトルは、そんなことを思わせる。 エピソードは最後のほうにあるので、かなり意外な感じではあるのだが。

この本の主人公は、小さなアクエリアムショップのオーナーだ。 30歳にして独身。
昔から転校で友達をあまり作れなかったが、一年間、すばらしい男女の友人に出会い、楽しい日々を過ごした。
そのときのことを思いつつも彼は現実と戦っている。
恋愛に対してはとても不器用だ。  そして、お見合いシステムに登録して、出会った相手と何度かデートをしている。
そこに、ひとりの元モデルが従業員希望で現れた。そこから彼の記憶の過去と現在が行き来をはじめ、過去の甘酸っぱい思い出、そして現在の魅力的な女性たちが彼の周りを取り巻いていく。

それ以上は、本文に任せることにしよう。
正直、私はこの本がやっぱり好きだ。やっぱり、というのは「世界の中心で、愛をさけぶ」でも比較的評価が高かったことから想像が付くだろう、ということだ。

甘酸っぱい思い出。そして、もう一つの国での出来事。
みんなひっくるめて、私は大好きだ。

そして、自分ではできない、とわかっているからこそ、この作品の登場人物に同感するわけだし、途中、そして最後のいろいろなイベントも、ありえないな、と思いながらもあってもいいよな、と考えてしまう。

読者の期待をちゃんとかなえてくれる、という意味でも、しっくりと来る小説だと思う。もちろん欠点も多いし、とくに偶然とかが左右する部分は「ありえない」という批判が来るだろうなとも思う。

だが。

先入観を捨て、心を真っ白い紙、タブラ・ラサにして読んでみてほしい。
この本は、あなたの恋愛の感性を、刺激してくれるかもしれない。

決して激しい性愛のシーンは出てこない。
若いころの、心が揺れるわりに口にできない状態。そのことを思い出させてくれるような小説だ。

お勧め度: ☆☆☆☆1/2
けなすのは簡単です。でも、この本のよさをじっくり味わうことも、ときにはいいかな、と思えるのです・・・
by moon99999 | 2005-07-17 23:59 | 恋愛小説