その時は彼によろしく
2005年 07月 17日
そのときは彼によろしく 市川 拓司
小学館 2004-03-31
恋愛小説のよしあしを語るときに
1)表現のよしあし
2)設定
3)ストーリー
4)結末
などを見て考える人は多いと思う。
あるいは、私のように、作品に「共感」できるかどうかで考えるのもいいと思う。
この小説は、「今、会いにゆきます」の市川拓司の書いた長編恋愛小説だ。
その言葉を聴いて、喜ぶひとと、げんなりする人がいるだろうと思う。
「どうせ内容のない、予定調和的な恋愛小説だろ、オレにだって書けそうだ。」
そう評する人がいてもまったく不思議はない。 実際は、書けそうだ、というのと書く、というのは想像以上に大きな壁があるのだが。
さて、この作品を、本屋大賞のノミネートの中で、大森望氏はいろいろけなしていた。
表現も好きになれない、という。
などとネガティブなものをまず並べ立てた上で。
私は、この作品が好きだ。
表現が稚拙なりエセ文学だといわれようとも。
ストーリーがご都合主義でも。
結末が見えていても。
「こんな男はいない」といわれそうだと思っても。
一種の純愛物語、ともいえなくもない。
不思議な話だ。
愛にもいろいろある。男女の愛と家族の愛は違うかもしれない。
だが、他人のために何かするのが愛だ、とすれば、恋人の対しての愛と家族への愛も同じかもしれない、と思ったりする。
この小説のタイトルは、そんなことを思わせる。 エピソードは最後のほうにあるので、かなり意外な感じではあるのだが。
この本の主人公は、小さなアクエリアムショップのオーナーだ。 30歳にして独身。
昔から転校で友達をあまり作れなかったが、一年間、すばらしい男女の友人に出会い、楽しい日々を過ごした。
そのときのことを思いつつも彼は現実と戦っている。
恋愛に対してはとても不器用だ。 そして、お見合いシステムに登録して、出会った相手と何度かデートをしている。
そこに、ひとりの元モデルが従業員希望で現れた。そこから彼の記憶の過去と現在が行き来をはじめ、過去の甘酸っぱい思い出、そして現在の魅力的な女性たちが彼の周りを取り巻いていく。
それ以上は、本文に任せることにしよう。
正直、私はこの本がやっぱり好きだ。やっぱり、というのは「世界の中心で、愛をさけぶ」でも比較的評価が高かったことから想像が付くだろう、ということだ。
甘酸っぱい思い出。そして、もう一つの国での出来事。
みんなひっくるめて、私は大好きだ。
そして、自分ではできない、とわかっているからこそ、この作品の登場人物に同感するわけだし、途中、そして最後のいろいろなイベントも、ありえないな、と思いながらもあってもいいよな、と考えてしまう。
読者の期待をちゃんとかなえてくれる、という意味でも、しっくりと来る小説だと思う。もちろん欠点も多いし、とくに偶然とかが左右する部分は「ありえない」という批判が来るだろうなとも思う。
だが。
先入観を捨て、心を真っ白い紙、タブラ・ラサにして読んでみてほしい。
この本は、あなたの恋愛の感性を、刺激してくれるかもしれない。
決して激しい性愛のシーンは出てこない。
若いころの、心が揺れるわりに口にできない状態。そのことを思い出させてくれるような小説だ。
お勧め度: ☆☆☆☆1/2
けなすのは簡単です。でも、この本のよさをじっくり味わうことも、ときにはいいかな、と思えるのです・・・
小学館 2004-03-31
恋愛小説のよしあしを語るときに
1)表現のよしあし
2)設定
3)ストーリー
4)結末
などを見て考える人は多いと思う。
あるいは、私のように、作品に「共感」できるかどうかで考えるのもいいと思う。
この小説は、「今、会いにゆきます」の市川拓司の書いた長編恋愛小説だ。
その言葉を聴いて、喜ぶひとと、げんなりする人がいるだろうと思う。
「どうせ内容のない、予定調和的な恋愛小説だろ、オレにだって書けそうだ。」
そう評する人がいてもまったく不思議はない。 実際は、書けそうだ、というのと書く、というのは想像以上に大きな壁があるのだが。
さて、この作品を、本屋大賞のノミネートの中で、大森望氏はいろいろけなしていた。
表現も好きになれない、という。
などとネガティブなものをまず並べ立てた上で。
私は、この作品が好きだ。
表現が稚拙なりエセ文学だといわれようとも。
ストーリーがご都合主義でも。
結末が見えていても。
「こんな男はいない」といわれそうだと思っても。
一種の純愛物語、ともいえなくもない。
不思議な話だ。
愛にもいろいろある。男女の愛と家族の愛は違うかもしれない。
だが、他人のために何かするのが愛だ、とすれば、恋人の対しての愛と家族への愛も同じかもしれない、と思ったりする。
この小説のタイトルは、そんなことを思わせる。 エピソードは最後のほうにあるので、かなり意外な感じではあるのだが。
この本の主人公は、小さなアクエリアムショップのオーナーだ。 30歳にして独身。
昔から転校で友達をあまり作れなかったが、一年間、すばらしい男女の友人に出会い、楽しい日々を過ごした。
そのときのことを思いつつも彼は現実と戦っている。
恋愛に対してはとても不器用だ。 そして、お見合いシステムに登録して、出会った相手と何度かデートをしている。
そこに、ひとりの元モデルが従業員希望で現れた。そこから彼の記憶の過去と現在が行き来をはじめ、過去の甘酸っぱい思い出、そして現在の魅力的な女性たちが彼の周りを取り巻いていく。
それ以上は、本文に任せることにしよう。
正直、私はこの本がやっぱり好きだ。やっぱり、というのは「世界の中心で、愛をさけぶ」でも比較的評価が高かったことから想像が付くだろう、ということだ。
甘酸っぱい思い出。そして、もう一つの国での出来事。
みんなひっくるめて、私は大好きだ。
そして、自分ではできない、とわかっているからこそ、この作品の登場人物に同感するわけだし、途中、そして最後のいろいろなイベントも、ありえないな、と思いながらもあってもいいよな、と考えてしまう。
読者の期待をちゃんとかなえてくれる、という意味でも、しっくりと来る小説だと思う。もちろん欠点も多いし、とくに偶然とかが左右する部分は「ありえない」という批判が来るだろうなとも思う。
だが。
先入観を捨て、心を真っ白い紙、タブラ・ラサにして読んでみてほしい。
この本は、あなたの恋愛の感性を、刺激してくれるかもしれない。
決して激しい性愛のシーンは出てこない。
若いころの、心が揺れるわりに口にできない状態。そのことを思い出させてくれるような小説だ。
お勧め度: ☆☆☆☆1/2
けなすのは簡単です。でも、この本のよさをじっくり味わうことも、ときにはいいかな、と思えるのです・・・
by moon99999
| 2005-07-17 23:59
| 恋愛小説