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by moon99999
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ファースト・プライオリティ

ファースト・プライオリティ 山本文緒  2002年 幻冬舎


「プラナリア」で直木賞をとっている山本文緒の短編集。
31歳の、31通りの最優先事項、というものだ。


山本文緒は、毒のあるものを書く。

女性だが、彼女は女性への描写に関してまったく容赦がない。
女性の嫌な面をとことんまで抉り出す。
中途半端な気持ちをそのまま描く。

彼女の書く女性の大部分は、欠点だらけだ。
魅力がある女性も、ない女性もいる。

そして登場人物に愛情を与えているなら救われるが、あまり救われない作品も多い。
ハッピーエンドとも限らない。

むろん男にも容赦ない。
体を目当ての男や金目当ての男への描写も容赦ない。

人間欠点だらけだ、ということをさらけだしてしまうのだ。

ただ、登場人物に、何かしら読者は共感をおぼえてしまうだろう。
自分とそっくり。あるいは、自分とは正反対でうらやましい。
時には、自分と正反対で嫌な奴だ。
などと。

それは、彼女が、自分の目線からあまり離れないところでの描写を心がけているからだろう。

OL生活。結婚共働きすれちがい生活。 主婦作家生活。 離婚後の生活。いろいろな経験がそれぞれ生きている。

彼女の別のエッセイ「そして私は一人になった」(http://qrl.jp/?136380)などを見ると、その状況がかなり垣間見えるともいえる。


他の短編は雑誌掲載だが、最終話は書き下ろし。彼女自身のエッセイとも読めるし小説とも読める。まあ私小説と思うのがよいのだろう。

あと、ひとつだけ、読者からの手紙形式がある。これがもし実在のファンをモデルにしているのなら、彼女はかなり人が悪いといえる。
そのファンレターを公開することを通して、身勝手なファンがいる、ということを世にさらしてしまうようなものだからだ・・・
by moon99999 | 2004-11-21 23:37 | 文学系