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by moon99999
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愚か者死すべし

愚か者死すべし 原 尞 
早川書房 2004-11-25
http://tinyurl.com/5udvm

「警察では、さよならを告げる権利はつねに警察官がもっていて、むしろ罪の無い人間ほどその権利から遠ざけられているように感じるものだ。私が自分を罪の無い人間だと信じていられたのは、思い出せないくらい遠い昔のことだが、それにしてもその罪は警察官にとやかく言われるような筋合いのものではなかった。」

こんな翻訳調の文章。
これこそ、9年間の沈黙を破って出版された原尞(漢字はこれが正しい。アマゾンでは寮、と書いているが間違いである。まだひらがなで書くほうが良心的だ)のハードボイルドだ。

まるで、小池光が訳したチャンドラーの文のようだ。
ページをめくると、大鹿マロイが出て来そうな感じがする。これこそが、彼の真骨頂だ。

主人公の沢崎は私立探偵。 依頼者の女性が不思議なことを言う。父親が無実の罪で自首したので助けて欲しい、というものだ。
沢崎が警察に同行すると、駐車場で男が狙撃された。犯人の車にとっさに沢崎は自分の車をぶつける。犯人は逃げ去り、警察官が殉死した・・・

政界の秘密を知る大金持ちの老人、警察官を名乗るなぞの男、誘拐犯のスズキイチロー、老人のもと愛人の美女、依頼者の美女・・・多くの人間がからみあう。そして沢崎に協力したり邪魔をする警察官たちとの駆け引きもある。

何より、沢崎がスーパーマンでないところがいい。
腕っ節もたいして強くは無いし、それに小心者だ。 そして・・・ハードボイルドとしての重要な要件であるところの、「女性に対して手を出さない」というところは、本当に理想的な探偵だ。

ハードボイルド(むしろ、チャンドラー型のハードボイルド)の真骨頂は、「やせ我慢」にあるのだから。

最後のところの謎解きがばたばたばた、と行ってしまうところは少し惜しい。
もう少し、謎を深めてみたり、激しいチェイスなり応酬があってもいいはずだ。(大沢在昌なら乱闘や追跡があるだろうし、馳星周ならあと5人くらい死ぬだろう。)
だが、それでもこの作品の魅力がそれほど落ちるわけではない。

スーパーマンではない探偵、沢崎の活躍を思い切り楽しみたい。

あとがき、で作者は今後続編を早いうちに書くということを宣言している。
ぜひ、期待したい。

お勧め度: ☆☆☆☆1/2 チャンドラーが好きな人なら必読!

注:レイモンド・チャンドラーとは、かの有名な「長いお別れ」を書いた作家です。


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by moon99999 | 2005-01-27 00:06 | エンターテインメント系