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by moon99999
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誰のための綾織

4562038896誰のための綾織  飛鳥部 勝則原書房 2005-05
http://tinyurl.com/d29ck

入れ子になった小説だ。作家、飛鳥部と編集者の対話で始まる。推理小説のタブーは何か、それに挑戦できるものか、という話しがあり、材料として、作家の教え子の高校生が書いた「蛭女」という小説が提示される。

蛭女、とは和室を使った密室ものだ。本来和室というのは密室トリックに向かない。鍵をかけたりがしにくいからだ。
だがこの作品では、3X3に区切られた家の部屋で起きた密室殺人をテーマにしている。
そのトリックは奇想天外であり、だがそれは簡単には想像できないだろう。

そして、話中の挿話を読み終わり、そのトリック、犯人をあなたは指摘できるだろうか。そして作中人物のコメントはその作品をどう評価するであろうか。





こういう作品を読んだとき、入れ子になっている場合の入れ子のプロットは陳腐であるべきなのか完璧であるべきなのか、は問題になるだろう。
後藤均「写本室(スクリプトリウム)の迷宮」においては、作者は入れ子のストーリーは陳腐であるべきだという考えを持っていたようだが鮎川先生じきじきの指導により内容を修正したらしい(その作品は鮎川先生が生きているときの最後の鮎川賞を受賞している)。

ひるがえってこの作品ではどうか。入れ子の小説は、とにかく奇想天外、という語彙がよく似合うといえる。それを、ばかばかしい、とするのか、その手があったか!と思うのか、それは読者の自由なのだろう。

そしてその外側に潜むもの。
それをもって本作品をフェアとよぶべきかアンフェアと呼ぶべきか。 ただ、筆者の懸命の説明には首肯できるところもある。

私としては、本作品のような扱いも、世の中的には「あり」だろうなと思う。
ただ、何度も使える技ではない。

一応、作者はしっかり材料はすべて提供しているわけで、それ以上の追及は不要だと思う。

お勧め度:☆☆☆☆  とにかくこの論理を受け入れるかどうかです。あなたの結論は?
by moon99999 | 2005-06-01 23:52 | 推理小説系