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by moon99999
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夜のピクニック

4103971053夜のピクニック 恩田 陸
新潮社 2004-07-31
http://tinyurl.com/4h3k3

「本屋大賞」受賞作品。

貴子と融(とおる)の高校には、年に一度、修学旅行の代わりに(これはどうもヘンだと思うが)「歩行際」というのがある。
長い距離を、一晩歩き続けるのだ。
前半は、クラスでまとまって。
後半は、自由に。

貴子も融も、相手の存在を意識しつつ、できるだけ無視してきた。



周りはなんとなくそれに気づいていた。きっとお互い好きなんだろう、と一部で思われている。
実際は違うのだ。貴子と融は異母兄弟なのだ。 同じ学年。同じ父親。しかしその共通の父はすでに死んでいる。二人はそれを秘密にしてきた。
貴子はこの歩行祭で、自分自身に賭けをする。
「歩行祭のうちに、ひと言でも、融と話をできれば・・・」

貴子にも融にも、それぞれ仲良しの友人がいる。貴子には、美和子と、アメリカにいってしまった杏奈。融には忍。
歩行祭は、「お祭り」なのだ。
長い時間、足の痛みに耐えて歩き続ける。それがいつのまにか快感になる。歩くことそのものが目的、歩行祭とはそういう祭りなのだ。

ハレのこの日、高校生たちはいろいろなことを考える。
告白したい女の子も居る。
とにかく早い順位でゴールを目指す男の子もいる。

だが、ここで描かれる皆に共通することがある。それは、歩行祭を楽しんでいる、ということだ。
体を痛めつけるこのような行事だが、皆は決してこれを嫌いではないのだ。

この歩行祭には、杏奈が去年かけた「おまじない」が利いていた。それが貴子と融の関係を大きく変えることになる・・・

大きな事件がおきるわけではない。高校の行事でみんなが歩くだけ、といわれればそれまでの作品だ。だが、そこに登場する高校生の感性を、しっかりと描き出せるのは作者の能力の高さを物語っていると思う。
これはミステリーではない。青春小説なのだ。

タイトルの「夜のピクニック」というのは必ずしも正確ではないと思う。むしろ「夜の歩行祭」というベタなタイトルのほうがよかったかもしれない。
だが、「夜のピクニック」のほうが売れそうなこともまた確かだろう。

本屋大賞に選ばれたのは、やはり女性の読者(書店員)に受けがよかったんだろうと思う。
「明日の記憶」が敗れたのは残念だが、いい作品だと思う。

この本は、ミステリー要素がない青春ものも書ける、という恩田陸の宣言なのだろう。

お勧め度:☆☆☆☆1/2 青春は歩行だ!


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by moon99999 | 2005-06-04 17:52 | 文学系