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by moon99999
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「大買収時代」のファイナンス入門―ライブドアvs.フジテレビに学ぶ

4535554609「大買収時代」のファイナンス入門―ライブドアvs.フジテレビに学ぶ 滝川 好夫
日本評論社 2005-06

http://tinyurl.com/e4pmy

このタイミングで出るような本だから、どうでもいいようなあやかり本かと思って手に取った。
ところが、意外なことに、結構ちゃんとした本であることに驚いた。

おそらく新聞や雑誌などに寄稿していたのだろう。ほぼ時系列に、その時点その時点で外部の人間の考察できるような項目が網羅されている。

そのため、あとから読むと、ちょっとあれ、というところもあることはある。 「今後どうなるか見守りたい」とあってもどうなるかの結末までその本の後のほうに書いているのだ。

筆者は神戸大学の教授だ。
この本は実はファイナンスの入門書としてもある程度は機能しうる。
いや、副読本と言うべきか。

実際、ライブドアを題材にして、CAPMの話やWACCの話が説明される。
・・・と思って、またびっくり。
よく見ると、見出しだけはライブドア、フジテレビという名前を使いながら、実際に出ている数字は全然リアル・フィギュアではなくて架空のものなのだ。
あるいはグロービスの教材の数字だった。

もちろんこの薄い本の中での話なので、どうやってCAPM (Capital Asset Pricing Model)やらWACC(Weighted Average Cost of Capital) 、NPVなどの計算ができるか、というくらいにとどまっているのだが、本当の数字を使った議論をしたのであれば、少なくともブリアリー・マイヤースの本などで机上の空論をするよりはずっと面白いものになるはずであった。

とにかく、前半は法的な問題が中心であり、後半はファイナンス理論の問題が中心となる。それが全体的にライブドア事件を題材にしてリアルな問題として語られる・・・ように見えてやはり後半の数字は仮想のものだった。

アナリスト試験やCFPなどの勉強で頭が疲れた人たちに対しての気分転換の書としてもお勧めだといえる。

だが、タイトルのフジテレビだのライブドアなどははっきりいって後半は羊頭狗肉だ。

おそらく、後半は前に作ってあって、それにライブドアの話でどこかに寄稿したペーパーをまとめて前半jにしたうえで、その後半の見出しとかの一部にライブドアとかフジテレビという名前を入れてお茶をにごしたのだろう。

これだけで理論を全部理解することは到底不可能ではあるが、その理論への興味をひかせる道筋をつける題材としては、お勧めともなりうる。ただ、その際、リアルなバリュエーションが提示されていると思うとがっかりする可能性もあるのでご注意。

お勧め度: 専門書のため差し控え
by moon99999 | 2005-07-30 17:43 | 実用書